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特に先物手口については25取引業者のうち手口の少ない一部を除く19業者について集計しているが、明らかな特徴が見て取れる。
12/30現在の先物建玉の上位5社と下位4社+本邦ネット証券を並べたのが下記の表である。
一方、売り建玉は野村證券の-190,113枚を筆頭にみずほ証券の-58,882枚売り越し・・・と続き、本邦国内証券筋における売り建玉の合計は-316,070枚と外資系証券の持つ買い建玉とほぼ同数となっている。
つまり、買い方が外資系証券筋、売り方が本邦国内証券筋という構図が出来上がっている。
先物300,000枚の時価総額は約7兆円であり、国内証券筋は今後7兆円を買い戻す必要に迫られており、その多くが含み損となっている買い方ペースである。
これらの売り玉は日経平均が2/8の20,315円から4/24の22,362円に上昇する過程で徐々に積まれて含み損状態となり、その後、6/4の20,289円安値への下落の際に利益確定の返済買いを出すことが出来ず、逆に売り乗せていったために売りが膨らんだ。
また、8月の1ヶ月間には20,110円~20,700円のレンジ相場となった際に売り建玉の3割~4割程度を返済できたものの、9月の急騰局面で再度売り乗せを図り、現在の売り長状態となっている。
売り玉の中身は純然たる先物売りのほかに、日経レバやダブルインパースETFの組成が相当数含まれていると思われる。
このように売りが溜まった要因としては、昨年秋に始まった暴落相場の痛手から上昇に対して懐疑的になった日本の投資家の心理がある。
とりもなおさず、本邦投資家は何とか損失を可能な限り低く抑えて売り玉を買い戻そうと試みるが、膠着から下落するかのように思わせて急伸する相場展開が続き、日経平均の急伸は新たな売り玉を生み出し、買い方の含み益を伸ばす結果となっている。
現物の投資主体別売買動向で見るとおり、日経平均の上昇局面では海外投資家の大口買い、個人投資家の大口売りとなっており、逆に日経平均の下落局面では海外投資家の大口売り、個人投資家の大口買いの構図となっていることと同義である。
したがって、この「海外勢の買い」vs「国内税の売り」が解消させれない限り、日経平均の上昇基調は継続する。
ただ、買い方としても含み益を実現益に換える必要があり、要所では利益確定売りによる押し目をつくると思われるが、大きな押し目をつくるよりは小刻みな押し目で来ると思われる。
(ただ、日経平均の上昇が続いており、上昇幅が小さくなっていることも事実であり、買い玉の振るい落としとボラをつくるための急落を演出してくる可能性は考えられる)
いずれにしても、おそらく本邦証券関係者は、日経平均の上昇は歓迎すべきことであるが、日々大量の先物売り残を眺めてため息をついていることだろう。
これは余談であるが、日経平均が2万円を割れた際に、18,000円割れと言って下値不安を煽ったり、5月のGWに際してはヘッジとしてダブルインパースを勧めていたのは証券関係者であるからだ。
余談:変わりつつある投資環境
なお、多くの日本人は老後の2,000万円問題から公的年金に頼る危うさや一向に上がらぬ給料(年収)から、iDeCo(イデコ)やNISA・投資信託、高配当株を切り口にした株式投資に目を向け始めており、株式手数料無料化の波と相まって下値を支える存在になると思われる。
過去、NTTの上場により巻き起こった株式ブームはマネーゲームで終わってしまったが、今後は資産形成としての株式投資ブームが訪れる気配があり、日経平均上昇のニュースによって投資熱は徐々に拡大すると思われ、日本の株式市場が失われた20年から脱却する日は近いと見ている。
また、自社株買いの増加も売り圧力低下に相当寄与しており、海外投資家の買い意欲を刺激していると見ている。