先週木曜(3/11)に公表された「投資主体別売買動向」をまとめると以下のとおりとなる。
なお、スペースの関係上、主要と思われる投資主体のみをまとめている。
全体の表
海外投資家の売買動向
上の表から、文字が大きくなるよう海外投資家部分を抜き出したものです。
3月第1週は現物・先物合わせて2,645億円と先週・先々週からは売りが収まっている。
ただし、3月は4.5週のため、単純に4.5倍を乗じれば1兆円を越す計算となり、2月の1.2兆円に匹敵する売り越しとなる可能性を残している。
国内投資家の売買動向
引き続き、年金基金の売買動向が反映されるとする「信託銀行」が4,520億円と今年に入って最大の売り越し幅となっており、年初来では1.2兆円を売り越している。
(この年金基金の売り越しについては、これまで筆者が記してきたとおりの展開となっている)
また、投資信託も2月の各週1兆円を超える売り越しよりは落ち着いたものの、9,749億円と引き続き1兆円近くを売り越しており、依然として利益確定余地が残っていると見ている。
これら国内勢の売りに対して個人信用は今年に入って7,715億円を買い越しており、特に、直近の日経平均3万円到達後の押し目での買い越しが増加している点は注意が必要と見ている。(過去データからは、個人信用は逆張りが多く、トレンドに反するケースが少なくない)
なお、筆者がもっとも重要と見ているのは、以下に考察する「年金基金(信託銀行)」の売買動向である。
年金基金のポートフォリオからの推測
年金基金(GPIF)は四半期毎に運用資金のポートフォリオを公表しており、最新は昨年12月末現在となる。
注目すべきは12月末現在で、国内株式の比率は25.28%・海外株式は25.36%と、両者ともに運用の基準としている各25%を上回っていることだ。
もちろん、±8%の調整率の範囲内となっているため、運用上の大きな問題はないが、少なくともここから買い増しに来るとは思えないことは、これまで記した来たとおりであり、事実としても年初来の1.5兆円の売り越しは正に年金基金がポートフォリオの割合を落とすべく売りに来ていることの証と見ている。
また、注目すべき点として、12月現在の日経平均は27,444円であり、足元の日経平均は29,717円と2,300円上方に位置していることが挙げられる。
つまり、年金基金は年初来で1.5兆円を利益確定しても、筆者の推計では、なお運用基準の25%を上回っている可能性があり、3月期末を超えても引き続き利益確定売りを継続する可能性があると見ている。
(TOPIXで見ても、直近のバリュー株の上昇により、利益確定売りを継続する必要がある)
無理して売らなくても良いのではと思われるかもしれないが、年金基金は日銀ETF買いとともに『官製相場』の主翼を担う存在である以上、ここではいったん売りの主役にならざるを得ない事情があると推測している。
それは、次の株価上昇を演出するためには、運用比率を少なくとも22%~23%に引き下げ、買い余力を持つことが求められるからである。
コロナ禍にあって、日経平均・TOPIXともに十分なほど上昇しており、仮にここで日経平均・TOPIXが下落したとしても、株価下落を政府与党の責任として糾弾する向きは少ないと思われるとともに、年金財政の健全化のためにも利益確定売りを継続することは正義であると筆者は見ている。
そして、これが本稿の主眼となるが、政府与党にとって、今、株価が上がっては困る事情があると見ている。
仮に目先、株価が上昇した場合は6月SQがピークなり、少なくとも年末までは冴えない展開が続くと思われる。
一方、ここで株価が下落トレンドに入るならば、2月~3月高値 → 6ヶ月後の8月~9月には需給面からも上げやすい日柄がやってくる。
折りしも、今年秋には否応なく総選挙が行われる予定であり、政局面からも総選挙 → 政策期待の株高が年金基金や日銀の手により演出されると予想している。
なお、年金基金は、次の株安により仕込みが終えた段階で、一定割合の株式を25%ルールから外すのではないかと見ている。
歴史的な高配当となっているバリュー株については、足元の価格で利益確定するよりも、引き続き保有を継続し、インカムゲインとキャピタルゲインの両者を得ていくのが年金財政の健全化に資すると推測され、官製相場の胴元が選ぶ道筋であると見ているからである。