2021-04-03

3月第4週・投資主体別売買動向の考察と予想(4/3)


投資主体別売買動向の概況


先週木曜日に公表のあった3月第4週 (3/22-26) の「投資主体別売買動向」をまとめると以下のとおりとなる。

なお、スペースの関係上、主要と思われる投資主体のみをまとめている。

全体の表 







※海外・国内投資家別の拡大図あり


海外投資家の売買動向

上の表から、文字が大きくなるよう海外投資家部分を抜き出したものです。










海外投資家の売買動向については、現物を約3,700億円売り越したものの、先物は168億円売り越しの売り買い交錯となっており、合計では現物売りの影響で3,900億円程度の売り越しとなっている。

この週は日経平均が週間で-615円下落した週であったが、(海外勢による)前週・前々週の買い戻しにより日経平均が約1,000円の上昇となったことから、利益確定売りを入れたと見ている。


国内投資家の売買動向


年金基金の売買動向が反映されるとする「信託銀行」が5,021億円と今年に入って最大の売り越し幅となっており、年初来では2.5兆円を売り越している。

(この年金基金の売り越しについては、これまで筆者が記してきたとおりの展開となっている)

ただ、信託銀行と同様に利益確定売りを続けていた投資信託は、7.4億円の売り越しと、前週・3月第3週の売りから急減しており、ピークアウトとなった感がある。

また、信託銀行・投信と肩を並べる売り越し額を記録していた個人現金についても前週の売り越しから一転して買い越しに転じており、日経平均3万円超えをきっかけとした個人の売りについては一巡したと見られる。

なお、個人信用も大きく買い越しており、個人現金と合わせて約5,000億円の買い越しと、信託銀行の売りを個人が吸収している点は注目される。


年金売りはどこまで続く?


年金基金(GPIF)は、運用総額の各25%を国内株式・海外株式に振り当てている。

12月末現在の国内株式の比率は25.28%・海外株式は25.36%と、両者ともに運用の基準としている各25%を上回っていることから、益出し及び買い余力を創出する上でも、年度末に向けて売り増してくると想定していたとおり、3月第4週は週間で最大の売り越し額を記録し、年初来では2.5兆円を売り越してきた。

これまでの日銀ETF買いが1日700億円であったことを考えれば、およそ35回分、営業日ベースでは7週間にわたって連日、日銀ETF買いを入れ続ける金額であり、かなりの巨額である。

(信託銀行の手口については、すべてが年金基金ではなく、他の主体も含まれていると思われるが、多くを占めると言われていることから、便宜上、信託銀行=年金基金の手口として観察している)

(なお、日銀ETF買いも信託銀行を通じて行われているとされており、信託銀行の売り手口から日銀ETF買い分を減算する必要があるが、日銀買いが誤差程度でしかなくなったため、複雑化するのを避けるため考慮していない)



上図は、公表されている12月末現在の年金基金のポートフォリオであるが、ここから1月以降の売り手口を減算し、TOPIXを基準とした保有割合を試算すると以下のとおりとなる。


・国内株式 25.28% → 23.5% 
・海外株式 25.36% → 25.6%

(海外株式については、国内株式と同水準の売りを出したとの想定での試算である)

国内株式については保有割合が23.5%と、まずまず低下しているものの、買い余力については多少ある程度で、それほど大きくはない。

ただ、仮に1月以降の利益確定売りをまったく出さなかった場合の試算では、保有割合は 25.36% → 25.6%に上昇していたと推測され、買い余力どころか、売りを出さなければならなかった水準であることを考えれば、かなり首尾良く立ち回れた(海外勢の買戻し圧力が大きい)と言える。

今後、年金基金がどのように対処していくかを予想すると、年金基金は買いもできるし、利益確定売りもできる良いポジションにいると見ている。

現水準での買い余力は2兆円程度あることから、下げれば買い付ければ良いし、上がれば「売り上がり」によって買い余力を増やし、次なる下落または上昇局面の創出を手がけることができる。

折りしも、月内にも野党による内閣不信任案が提出されれば解散総選挙によって民意を問うとの観測が生まれている。

現段階での解散総選挙の可能性は少ないながら、年金基金によるバックアップ態勢は整ったと言えるだろう。

また、今回、解散総選挙に至らなければ、年金基金は海外勢による日本株の買戻しの流れに乗って、相場を冷やさない程度の「売り上がり」を継続し、日経平均・TOPIXが上昇してもなお、買い余力の創出を続けると見ている。

これにより、日経平均・TOPIXの下値水準が切り上がるととももに、十分な買い余力を持った年金基金は、おそらく秋であろう解散総選挙での「買い上がり」につなげると予想している。

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